保護猫カフェの始まりと、ドワーフキャット・ウリエル
私が保護猫さんの存在を知るきっかけになった1匹の小さな猫「ウリエル」との出逢い。
命の尊さを教えてくれた私の天使、ウリエルとの物語に、どうぞ少しだけ、おつきあい頂ければ幸いです。
その頃の私は、今まで生きてきた中で最も落ち込みが酷く、先が見えない不安な毎日を過ごしていました。
ある日の夕方、私が帰宅する途中にどこからともなく子猫のか細い声が聞こえてきました。
周りの人はその声が聞こえないようで、気にもとめていない様子でした。
あたり一帯を探しても見つからず、次第に声も聞こえなくなり、しかたなく私は一度家に帰ることにしました。
しかし、辺りが暗くなっきた頃、ベランダに出たらやはり子猫の鳴き続ける声が聞こえてくるではありませんか。
今度こそは見つけなければ!と思い、外へ飛び出しました。
鳴き声はより一層大きくなり、それは誰も住んでいない空き家の屋根の上からだとわかりました。
屋根の上でみつかった、保護猫ウリエル
どうして屋根の上にいたのか、今でも不思議です。
母親が連れて行ったのか、カラスにさらわれたのか・・・
近くのポールをよじ登りなんとか見つけた、片手に余るほどの小さい仔猫。
その小さな命に私は「ウリエル」と名付けました。
目は白濁しているし、お医者さんからは助かるかどうかわからないと言われながら、子猫の知識が全く無い私には、毎日何が正解で何が間違っているのかも分からないまま、ただその命を絶やさないように育てていくことで精一杯でした。
朝になってウリエルの心臓の鼓動が聞こえると、ああ、生きている!良かった!と毎日が始まる・・・
命の灯火を消さないように、毎日生きるってことはすごいことだと、ウリエルと過ごす日々で生きることの尊さを教えてもらいました。
そんな私の大切なウリエル、通称うりは、普通の子とは全く違っていました。
まずその事に気付いたのは、友人と互いの猫の写真を見せ合った時でした。
同じような月齢であるにも関わらず、大きさ、成長の速度が全く違ったのです。
生後半年のときには周りの子たちが2キロは超えているのに、うりは500グラムもありませんでした。
私は子猫を育てるのは初めてだったので、周りとの違いに気付かなかったのです。
あらためて、それまでに通っていた病院でうりの身体を調べてもらい、そこでうりが「ドワーフキャット」日本でいう「小猫症」だと知りました。
成長ホルモンの異常によって体が発達しないという、まだまだ原因が不明で、症例も少なく、どのくらい生きることができるのかも分からない病気です。
舌が短いせいで水をうまく飲めず、腸の動きも悪いので毎日便秘なので、3時間おきに腸のマッサージをしていました。
24時間一緒にいないと、うりの状態がどうなるかわからない。
お世話は他の猫さんよりも手がかかったかもしれませんが、私にとってうりは、大切な家族であり、お世話をすることは喜びでした。
毎日朝起きると隣にはうりがいて、落ち込んでいる時も、楽しい時も嬉しい時もいつも一緒にいて癒してくれて、私にとっては天使のような存在でした。
不安しかなく落ち込んでいた私でしたが、うりと一緒に居ると景色が変わってきて、温かくてキラキラした日々に変わっていました。
そんな時、お外の猫さん、いわゆる野良猫さんの虐待ニュースを目にしたのです。
とても悲惨なニュースでその子猫のことを思うと胸が苦しくなり、とても悲しくなりました。
そして、うりももしかしたらそんな目に遭っていたのかもしれないと思うと、いてもたってもいられなくなり「この子達を守りたい」と強く思ったのです。
そんな思いの中で「カフェ ウリエル」は誕生しました。
生活に補助が必要なうりと私がずっと一緒にいられる場所、そしてうりのようにお外で生まれた子や過酷な状況で、生きていく子に家族とあたたかい居場所ができるように。
小さなお店に何ができるか分からないけれども、1匹でも悲しい子が救われるのならという気持ちでした。
それからお店は、うりと仲間たち、そして優しいお客さんに支えられ、たくさんの子達が運命のご家族と巡り合い卒業して行きました。
こうしてずっと楽しく幸せに溢れた毎日が続いていくのだと思っていました。
でも、別れは突然やってきたのです。
2017年、2月27日。
うりが本当の天使になりました。1歳7ヶ月ほどの短すぎる命です。
私にとって自分よりも大切に思えるほどの存在。うりとはこれからもたくさん思い出を作って、
たくさんの子達の卒業を見届けていって、生涯を一緒に過ごせる気がしていました。
もうすぐ寒い2月が終わり暖かくなれば一緒にお花見をしたいな。
こんな小さな願いさえもう叶わないんだ、と思うと言葉では言い表せないほどの寂しさがこみあげてきます。
私は生きる気力を失い食事をすることも、何をする気も起きず、ただ毎日泣き続けて眠り起きてまた現実を受け入れる事が出来ず泣き続けていました。
その間お店の子たちのお世話には毎日行きましたが、営業は少しの間お休みをいただきました。
そこで抜け殻のようになった私を元気付けてくれたのは、お店の仲間たちでした。
みんなはいつも通りの無邪気な顔で、永遠と泣きつづける私のそばに代わる代わるついていてくれました。
保護猫さんが1匹でも多く救われるようにと思っていましたが、本当に救われ助けられたのは私でした。
泣き続けていたらみんなに申し訳ない、みんなのために、そして「カフェウリエル」私の居場所を作ってくれたうりのためにも前を向き、うりにとって自慢のママでありつづけないといけないと思い直しました。
それがうりが教えてくれた、人生での私の使命なんだと思っています。